芍薬

芍薬の植物学

先ほど紹介した「立てば芍薬〜」のところで紹介した牡丹の仲間です。ただし向こうは“木”こちらは“草”であるところが大きな違いでしょうか。それでは“芍薬”についての植物学を紹介していきます。

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昔の言葉で「立てば芍薬 座れば牡丹 歩く姿は百合の花」といえば美女を指す言葉で、すらっとした清楚な感じの花がたおやかな女性の美しさを表現しています。そこで今回はこれにうたわれている美しい花「芍薬(しゃくやく)」を紹介してみましょう。

芍薬とは

牡丹科に属する多年草。ただし冬に生き残るのは根の部分だけです。昔から芍薬の美しさは歌に詠まれているほどなじみ深く、その当時から可憐な花を愛した人たちによって育てられてきました。清楚な感じが日本人好みなのか珍重され、「ジャパニーズタイプ」という独特な咲き方をするように品種が改良されてきました。

芍薬と牡丹

接ぎ木という栽培技術があります。例えばノイバラという植物を切り取り、その上にバラをくっつけてしまうという方法ですが、これを使うとノイバラの長所(この場合花の咲く数が増える)を兼ね備えたバラが咲きます。この場合、ノイバラを台木、バラを穂木と呼びます。芍薬も牡丹の台木として使われることがあります。この場合芍薬の長所を生かした牡丹が咲くことになります。

芍薬の種類

この芍薬、本当に昔から栽培されていただけあって実に多品種にわたります。“小町芍薬園”さんという芍薬を栽培しているところだけでも130種類もの芍薬が栽培されています。これが世界規模(西欧ではバラなどと並んで芍薬・牡丹が人気。品種改良も盛ん)となればどれだけの数になるのでしょうか?

芍薬と漢方

名前についている通り芍薬は漢方薬として利用されます。主に乾燥させた根を使用します。この芍薬は筋肉の張りに伴う痛みや頭痛・腹痛などの鎮痛剤として漢方ではかなりポピュラーな存在です。さらに芍薬にその他の漢方を複合させることによって色々な使い道があります。いくつか紹介してみましょう。

芍薬甘草湯

芍薬と甘草(この場合はカンゾウと読みます)をあわせた芍薬甘草湯(シャクヤクカンゾウトウ)は筋肉のけいれんや痛みに対して効果的です。というより鎮痛に対して漢方にはめずらしい即効性を発揮します。

芍薬甘草湯の問題

“筋肉疲労で痛む”“こむらがえりをおこした”といった筋肉系統の痛みにかなり効果がある芍薬甘草湯ですが、効果が高いがために依存性が強くなったりすることがある上に使用頻度が上がると高血圧のような副作用もありえるので、服用の際には必ず専門家の指示に従って服用する必要があります。

芍薬散

当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)は名前どおり当帰(セリの仲間、トウキの根)と芍薬をあわせたものです。貧血を始めとした冷え性・月経不順など血液に関した症状にもちいられます。これらの症状は特に女性に現れやすいものばかりなので、女性にはありがたい漢方といえます。

桂枝茯苓丸

桂枝(クスノキ科の桂の枝。まだ若いうちに取る)と芍薬などをあわせた漢方。頭痛・めまい・肩こりといった筋肉のひきつれにともなう症状や顔面にうっ血が認められる場合などに用います。顔面のうっ血とは赤ら顔とも呼ばれるのぼせた状態です。

その他の漢方

芍薬は鎮痛などに効果が高いことから、他の症状に効く漢方と併用することによって痛みをやわらげつつ回復を狙うために、他の漢方と併用されることが多いものです。また、ここで紹介したものは漢方で芍薬は良く使われることを紹介するためのものです。漢方は症状に合わせた複雑な処方が必要なので、これらを服用する場合は専門医に相談の上使用しましょう。

芍薬にまつわるお話

芍薬は日本文化に深く関わる花だけに逸話も多いようです。ここではそんな芍薬のお話の中から2つほど紹介してみようと思います。

芍薬姫

戦国時代の名将武田信玄の子、勝頼ですが勝気な性格により家康・信長連合軍に無謀な突撃を行い敗れてしまいます。このとき幼子の芍薬姫を配下のものに預けましたが、芍薬姫はそのままその地で病に倒れてしまいます。現在その芍薬姫をまつった芍薬塚が残されています。しかしその碑文を読むと“童子”という文章があるので芍薬姫は男の子だとされています。

芍薬と小野小町(その1)

美女として有名な小野小町は芍薬と関わりがあります。ちょっと長くなりますが紹介してみましょう。小野小町は美女の上に才女でした。そのためミカドを始めとする多くの求愛者が出ました。しかし小野小町はひっそりと暮らす道を選択し、自ら庵(いおり)を作ってそこで静かに暮らし始めます。

芍薬と小野小町(その2)

しかし求愛者の中でももっとも熱心だった深草少将はその後も熱心に恋文を送りました。熱意にほだされた小野小町は「丘の上に芍薬を毎日一株ずつ植えて百株にしてくれたらお逢いいたします」と返事しました。少将は待つ辛さを味わいつつも百日後には願いがかなう、と喜んで毎日芍薬を植え続けていきました。

芍薬と小野小町(その3)

この当時小野小町は病気をわずらっていたために百日という条件を出したのですが、少将はきちんとその約束を守り99日で99株の芍薬を植え、いよいよ最後の1株を大雨の中植えに行った少将でしたが、運悪く足を滑らして崖下に落ちてしまいました。小野小町は大変悲しんでそれ以降一人つつましく暮らしたそうです。

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